若き駐在妻の悩み in GUAM

あー、そんなに若くもなかったです。

グアムであなたが撃ち殺される可能性

"Catsle Doctrine"ーキャッスル・ドクトリンという法律をご存じでしょうか。

 

キャッスル・ドクトリンとはなんぞや

外務省海外安全ホームページによると、

自身の身や財産に危険を感じた場合の殺傷能力のある武器使用を正当化する法律

 (海外安全ホームページ: 安全対策基礎データ

であり、具体的な例を挙げると、自分の家(=城)の中に侵入してくるものに対し、家主は侵入の理由を問わずして殺傷能力のある武器を使って侵入者に対抗する権利があるよ、という法律です。

 

もっと端的に言えば、自分の城への侵入者は撃ち殺していいよ。ってこと。

「殺傷能力のある武器」とは、まあ銃器と考えていいでしょう。

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 この法律、2005年にフロリダ州*1で初めて施行されました。

 

グアムにもあります

それから南部や山岳部の州をを中心に広がっていき、ここグアムでも2014年に州議会*2により法案が可決されました。

きっかけとなる事件があったそうですが、詳しく調べきれてないのでまた機会があれば。

www.kuam.com

 専門的な知識に乏しいと誤訳しそうなので全訳はしませんが、この記事の中で、NRA(全米ライフル協会)のDarren Alvarezという方が、この法案が可決されたことによって起こる3つの変化について語っています。興味深かったのでざっくりですが訳してみました。

 

①presumption(根拠のある推測)からassumption(根拠のない仮定)への変化

the resident could not make the presumption that they were there to harm them

 今までは、「侵入者=家主や家の者に危害を加える者」だと考えるに至る何かしらの根拠があったとしても、その推測だけで行動することはできなかった。

"That's one of the biggest things is the assumption is that if someone is breaking into your house you can assume that they are there to do you harm,"

しかしそれが今度は、たとえ根拠がなくても「侵入者=家主や家の者に危害を加える者」だろうという仮定を基に行動できることになる。

 

②現行犯逮捕されなくなる

"The second thing is if someone has a self-defense shoot, up until the castle law was passed, it's standard operating procedure for police to arrest everybody."

The castle doctrine would not require an immediate arrest.

 ちょっとこのあたりの知識が乏しいのでかなりざっくり訳になってしまうんですが、

キャッスル・ドクトリンの施行前は自衛のためであろうがなんだろうが、何かしらの理由で発砲した人はとりあえずは逮捕(身柄の拘束?)をされていた。が、施行後はその必要がなくなった。おそらく裁判にはかけられるんでしょうが、裁判の日まで身柄を拘束されることはない。と、そういう解釈でおります。詳しい方いたらぜひご教示ください。

 

③侵入者やその家族に訴えられることがなくなる

"The third thing is if you have a self-defense shoot and you harm and kill somebody, in the States and the way it was in Guam you could get sued for that. You were liable for that and you could get sued because you hurt that person and their family could sue you because they could no longer commit crime and bring money home and you could get sued and you would lose,"

この文章で言っていることはですね、例えば、

あなたは自分の家でテレビを見てくつろいでいるとします。その時だれかがドアをぶち破って家の中に入ってきました。殺される!とっさにそう思ったあなたは、その侵入者に向けて銃を発砲しました。侵入者は足に大きなケガを負い、命こそ落とさなかったものの、もう二度とまともに動くことはできません。さあ、もしもキャッスル・ドクトリンが施行されていなかったとしたら、あなたは侵入者に訴えられてしまうでしょう。なぜかって?その侵入者はそのケガのせいで、もう二度と犯罪を犯して金目の物を盗みお金を稼ぐことができないからです。あなたはきっとその裁判に負けるでしょう…。

ということなんですね。アホかいなと思わずつぶやいてしまいそうですが、まあそこは自由の国アメリカ、ただの皮肉めいた文章だと…思いたい。。さすがに犯罪を犯す権利なんて認められてないよね?

 

どこまでを自分の城とみなすかは州によって解釈が違う

州によっては車や庭、滞在しているホテルの部屋への侵入に対し発砲が認められています。グアムでも、キャッスル・ドクトリンが適用される敷地の定義に庭は含まれるか否か?という議論がなされた事件が2016年に起こりました。

www.kuam.com

正当防衛と過剰防衛の差を「城」の内外かというエリアで区切るということは、ドアから身体が半分出ていたら?とか侵入者が家主に対して背中を向けていたら?とかそういうことになってきちゃうんですな。

 

他にも例えば、侵入者の年齢が何歳か、とかさ。

例えば1歳の子がよちよち自分の家に入ってきたのを見ても、侵入者だ!撃つ!とは常識的にならないじゃあないですか。少なくともそこで「理由を問わず侵入者を排除する権利があるから無罪」とはならないと思うんですよ。その辺の判断は陪審員がするとしても、じゃあ侵入者が5才だったら?10才だったら?って、「常識」を問う必要が出てくる。結局ケースバイケースになってしまうし、どっちの考えがマジョリティかという多数決になってしまう。

 

 自分の身は自分で守るという考え

銃の国アメリカとはよく言葉で聞きますが、実際にその法律がある地域に住んでいるという事実は、なかなか重みがあるというか。私もこっちに来てから教えてもらったのですが、やっぱり少なからずショックでした。

 

もちろん異国の地で他人の家の中に勝手に入るシチュエーションってなかなかないと思うけど、少なくともこの安全そうな島にはそういう決まりごとがあるんだっていう認識を持つことは大事なんじゃないかなあーと思います。

だってさ、例えば在ヒューストン日本国総領事館のHPを見れば

テキサス州法はその他の州の法律よりさらに広範な銃器等の使用を認めており、自身や財産の保護だけでなく、強姦、放火、不法侵入、強盗、夜間の窃盗、夜間の器物破壊等にも殺傷武器の使用による防護が認められています。

在留邦人の皆様におかれては、銃器等の所持が一般的である当地においては、不測の発砲があり得ることを改めて認識し、万が一にも間違って発砲対象とされたり、思わぬ場面で銃撃に巻き込まれたりすることのないよう、注意した行動を徹底するよう願います。

 という警告があるけど、まさかグアムでそういうことに巻き込まれるなんてなかなか思わないじゃないですか。

だって増加傾向にあるとは言えまだまだ犯罪率の低い島だし、のんびり平和に海を眺めてれば幸せさ、みたいな雰囲気なのに。旅行会社のパンフレットに載っているわけでもあるまいし。

 

でもね、ただ恐がるだけじゃなくて、これを機に「セルフ・ディフェンス」について真剣に考えるべきだなあとも思いました。自分の身は自分で守るという心構えと権利。これは犯罪や銃規制だけでなく、例えば健康保険への加入とか、そういう選択に対してもきちんと自分で決めるということ。ただ流されるままに、じゃあたぶんいろいろ困っちゃうから。大人ですしね。

 

ほんと、わーかわいいおうち!素敵な壁!これをバックに写真を撮ってインスタにアップしよー☆なんて思ってただけなのに撃たれちゃった。じゃシャレにならないからねえ…

 

 まとめ

・誰かに家に侵入された時点で、家主の取る防衛のための行動は理由を問わず正当防衛と見なされる。

 

・正当防衛と過剰防衛の微妙なラインを、「どんな武器を使ったか」とか「侵入の理由はなんだったのか」とか「武器の殺傷能力」で問うのではなく、「家の中」という境界線にひく。これが"Castle Doctrine"。

 

・いくら小さくて平和な島でも、知らなかったでは済まされないことが沢山ある。

 

参考資料

アメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国 (PHP新書)

アメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国 (PHP新書)

 

 

GUNLAWS.COM Florida Castle Doctrine

9 GCA CRIMES AND CORRECTIONS - JUSTIFICATION CH. 7 EXEMPTIONS AND DEFENSES http://www.guamcourts.org/CompilerofLaws/GCA/09gca/9gc007.PDF

Wikipedia-Castle doctrine Castle doctrine - Wikipedia

 KUAM News Home - KUAM.com-KUAM News: On Air. Online. On Demand.

 在ヒューストン日本国総領事館 日本国総領事館 ヒューストン 日本語 トップ

外務省 海外安全ホームページ 外務省 海外安全ホームページ

 

 

*1:当時の知事はJeb Bush、パパ・ブッシュこと第41代アメリカ合衆国大統領ジョージ・H・W・ブッシュの息子で第43代大統領のジョージ・W・ブッシュの弟さんです。

*2:賛成10、反対5。15人の議員によって決められたんですね